保育園で出会った不思議な子の話

2025年6月
  • チーム医療に不可欠な専門職、医療保育士の役割と重要性

    保育園

    病院という非日常的な空間は、大人にとっても不安を覚える場所ですが、子どもにとってはなおさらです。見慣れない医療器具、白衣を着た人々、そして痛みを伴う検査や治療。こうした環境は、子どもの心身に大きなストレスを与え、時に治療そのものへの拒否反応を引き起こすことさえあります。このような過酷な状況に置かれた子どもたちと、その家族に寄り添い、専門的な知識と技術をもって支えるのが「医療保育士」です。彼らの主戦場は、小児病棟や外来のプレイルーム。その最も重要な役割は、遊びを通して子どもの心を解き放ち、主体的に治療に向き合えるよう支援することにあります。遊びは、子どもにとって言葉であり、感情を表現し、世界を理解するための根源的な活動です。医療保育士は、この遊びの力を最大限に活用します。例えば、手術を控えた子どもに対して、ぬいぐるみを使った「手術ごっこ」を展開することがあります。これから自分の身に何が起こるのかを、遊びの中で疑似体験し、見通しを持つことで、漠然とした恐怖は具体的な理解へと変わり、不安が軽減されます。また、痛みを伴う処置の際には、子どもの好きな歌をうたったり、シャボン玉を飛ばしたりすることで意識をそらし、苦痛を和らげる「ディストラクション」という手法も用います。これは単なる気晴らしではなく、子どもの認知発達を深く理解した上で行われる専門的な介入です。さらに、医療保育士は医師、看護師、理学療法士、臨床心理士など、様々な専門職と連携するチーム医療の重要な一員でもあります。保育の視点から子どもの様子を観察し、その情報を医療チームにフィードバックすることで、より子どものQOL(生活の質)に配慮した治療方針の決定に貢献します。例えば、「あの子は最近、絵を描くときに黒色ばかり使うようになった」といった遊びの中での変化は、子どもの心理状態を知る貴重な手がかりとなり得ます。保護者への支援も欠かせない役割です。この時、自分を守るための言い訳や、責任転嫁と受け取られかねない言動は厳に慎まなければならない。初期対応と並行して、組織内での迅速な情報共有、いわゆる「報連相」が極めて重要になる。わが子の病気に直面し、動揺する保護者の話に耳を傾け、共感し、時には子どもの発達に関する情報を提供することで、親としての自信を取り戻し、前向きに病気と向き合えるようサポートします。このように、医療保育士は、病気の子どもの権利を守り、子どもらしさを失わずに成長・発達を続けられるよう、医療と保育の架け橋となる不可欠な存在なのです。