保育士という、社会の未来を育むかけがえのない専門職。その仕事の重要性とは裏腹に、「給料が低い」というイメージが長らく定着している。この問題は、保育士を目指す人々にとって最大の懸念事項であると同時に、深刻な保育士不足の根本的な原因ともなってきた。では、2025年現在、保育士の給料の実態はどのようなものなのだろうか。その平均額と、給料を左右する構造的な要因を、データを基に解き明かしていく。最新の調査によると、正社員として働く保育士の平均年収は、おおよそ390万円前後とされている。月収に換算すると約27万円、賞与を含めての数字だ。この金額は、全産業の平均年収である約450万円と比較すると、依然として数十万円の開きがあり、「保育士の給料は仕事の責任の重さに見合っていない」という指摘は、今なお現実味を帯びていると言わざるを得ない。しかし、この「平均」という数字だけを見て、全てを判断するのは早計である。保育士の給料は、勤務する施設の種類、地域、そして経験年数によって、大きな格差が存在するからだ。最も大きな違いが見られるのが、「公立」か「私立」かという点である。自治体が運営する公立保育園で働く保育士は、地方公務員という身分になる。そのため、給与は各自治体が定める公務員の給与表に基づいて支給され、勤続年数に応じて着実に昇給していく。賞与や退職金制度も安定しており、長期的なキャリアを見通しやすいのが最大の強みだ。一方、社会福祉法人や株式会社が運営する私立保育園の給料は、その法人の経営状況や理念によって千差万別である。公立保育園を上回る好待遇の園も存在する一方で、昇給がほとんどなく、厳しい条件で働かざるを得ない園も少なくない。一般的には、公立保育園のほうが、私立保育園よりも平均給与が高い傾向にある。次に、勤務する「地域」による格差も大きい。東京都の保育士の平均年収は、全国平均を大きく上回る450万円近くに達する。これは、高い家賃などの生活費を考慮したものであり、また、待機児童問題が深刻な都市部では、人材確保のために給与水準を高く設定せざるを得ないという背景がある。神奈川、埼玉、千葉といった首都圏や、大阪、愛知などの大都市圏でも、給与は全国平均より高い水準にある。一方で、地方の多くの県では、平均を下回るのが現状だ。さらに、「施設の種類」によっても給与は変動する。近年増加している、企業が従業員のために設置する「企業内保育所」は、福利厚生の一環として、一般的な保育園よりも高い給与や充実した手当を提示することがある。このように、保育士の給料は、決して一律ではない。全国平均という一面的な数字に惑わされることなく、その背景にある構造を理解すること。それが、自身のキャリアを考え、より良い労働条件を求めるための、全ての始まりとなるのだ。
保育士の給料の現実、全国平均と構造的な格差を徹底解剖