保育士という専門職のキャリアは、かつては一つの保育園に正職員として所属し、定年まで勤め上げるという道筋が一般的であった。しかし、働き方の価値観が多様化する現代において、その常識は大きく変わりつつある。組織の枠に縛られず、自らの専門性を武器に、自由な裁量で働く「フリーランス保育士」という選択が、今、大きな注目を集めている。それは、保育士が自身のライフステージや価値観に合わせて、より自分らしく輝くための、新しい働き方のカタチである。フリーランス保育士とは、特定の園に雇用されるのではなく、「個人事業主」として独立し、自らのスキルと時間を商品として、様々なクライアントと直接契約を結ぶ保育のプロフェッショナルを指す。その働き方は、実に多様だ。最も代表的なのが、個人家庭と契約を結び、子どもの自宅で保育を行う「ベビーシッター」や「訪問型保育」である。保護者のニーズに合わせて、数時間の一時預かりから、月極での継続的な関わりまで、柔軟なサービスを提供する。また、保育園やこども園が、職員の急な欠勤や行事などで人手が足りない際に、一日単位でヘルプに入る「スポット保育」も、フリーランス保育士の重要な仕事の一つだ。近年では、こうした単発の仕事を仲介する専門のマッチングプラットフォームも充実しており、働き手と施設を繋ぐインフラが整いつつある。さらに、コンサート会場や企業のセミナーなどで、臨時に開設される託児スペースで保育を行う「イベント保育」や、自身の得意分野を活かして、リトミックや英語、絵画などの専門的なプログラムを、様々な園や親子サークルに出向いて提供する「専門講師」としての働き方もある。なぜ今、フリーランスという働き方が、多くの保育士にとって魅力的に映るのだろうか。その最大の理由は、「時間と場所の自由」にある。正職員として働く場合、勤務時間や休日は組織の規定に縛られるが、フリーランスであれば、「今月はしっかり働く」「来月は子どもの行事があるのでセーブする」といったように、仕事の量を自身の裁量でコントロールできる。この柔軟性は、育児や介護といった家庭の事情と、専門職としてのキャリアを両立させたいと願う人々にとって、何物にも代えがたい価値を持つ。また、一つの組織に縛られないことで、人間関係のストレスから解放されるという側面もある。様々な現場を経験することで、多様な保育観に触れ、自身のスキルを客観的に見つめ直す機会にもなるだろう。フリーランス保育士は、組織の歯車ではなく、自らが事業の主体となる。それは、大きな責任を伴う一方で、自らの手でキャリアを創造していくという、大きなやりがいと喜びに満ちた、新しい時代の働き方なのである。
新しい働き方のカタチ、フリーランス保育士という選択肢とその魅力