病気の子どもたちを支える医療保育士の専門性は、近年、小児医療の現場で高く評価され、その需要は着実に高まっています。しかし、その重要性とは裏腹に、医療保育の分野は未だ多くの構造的な課題を抱えています。最も根深い問題は、医療保育士が国家資格として法的に位置づけられておらず、その業務が診療報酬の対象として認められていない点です。これにより、医療保育士の配置は完全に各医療機関の裁量と経営判断に委ねられてしまっています。結果として、大学病院やこども病院など、比較的規模の大きな施設での配置は進んでいるものの、多くの中小病院やクリニックでは、その必要性を認識しつつも人件費の面から配置に踏み切れないのが現状です。これは、子どもたちがどこに住んでいるか、どの病院に入院したかによって、受けられる心のケアに大きな格差が生じていることを意味し、子どもの権利保障の観点からも看過できない問題です。また、医療保育士自身のキャリアパスや労働環境も十分に整備されているとは言えません。専門性の高さにもかかわらず、その価値が給与などの処遇に適切に反映されにくく、キャリアアップの道筋も不明確なため、志を持ってこの分野に進んでも、将来への不安から離職してしまうケースも少なくありません。こうした課題を解決し、医療保育の未来を拓くためには、社会全体の理解を深めるとともに、制度的な改革が急務です。具体的には、まず医療保育士の業務を診療報酬の対象とし、病院が専門家として雇用しやすい環境を整えることが第一歩となります。さらに、将来的には「公認心理師」のように、医療分野で活動する保育士の国家資格化や、それに準ずる公的な認定制度を創設することも視野に入れるべきでしょう。これにより、専門性の質が担保され、医療保育士の社会的地位も向上します。幸いなことに、近年では「子ども中心の医療」という理念が広まり、医療現場における子どもの心理社会的支援の重要性への認識は確実に高まっています。この追い風を捉え、医療保育の専門職団体や関連学会が連携し、国や社会に対してその必要性を力強く訴え続けていくことが求められます。病気の子どもであっても、遊び、学び、発達する権利があるという認識が広まり、医療保育士の専門性への注目度は高まっています。すべての子どもが、病気の時でも自分らしく、笑顔で過ごせる社会の実現に向け、医療保育のさらなる発展に大きな期待が寄せられています。