保育士という仕事の魅力は、日々の感動や、人間関係の豊かさといった、現場で直接感じられるものだけに留まらない。その視野を少し広げてみれば、この仕事が、社会全体にとって、いかに重要で、かけがえのない価値を持っているかに気づかされるだろう。自らの仕事が、社会の未来そのものを創造しているという、静かだが、揺るぎない「誇り」。それこそが、保育士という職業の、最も深遠な魅力と言えるかもしれない。人間の人生において、その人格や能力の基礎が形成されるのは、脳の発達が最も著しい、乳幼児期である。この時期に、どのような環境で、どのような人々と関わり、どのような経験をするかが、その後の人生における、他者への信頼感、自己肯定感、学びへの意欲、そして困難に立ち向かう力といった、「生きる力」の根幹を形作る。保育士の仕事とは、まさに、この人間形成の最も重要な土台作りに、専門家として深く関わることに他ならない。安全で安心できる環境の中で、子ども一人ひとりの個性を認め、そのありのままの姿を肯定する。多様な遊びを通じて、子どもたちの好奇心と探求心に火をつけ、創造力の芽を育む。友達との関わりの中で、自分の思いを伝え、相手の思いを受け入れるという、社会生活の第一歩を、根気強くサポートする。保育士が日々行う、一つひとつの丁寧な関わりは、まるで、一粒一粒、肥沃な土を、子どもの心に撒いているようなものだ。その土壌から、やがて、どのような美しい花が咲き、どのような大きな木が育っていくのか。その成長の全ての源流に、自らが存在している。この実感は、保育士に、何物にも代えがてないほどの、大きな誇りと使命感を与えてくれる。また、保育士は、現代社会を支える、極めて重要な社会的インフラとしての一面も担っている。保護者が安心して働き、自己実現を追求できる社会は、質の高い保育が保障されていて初めて成り立つ。保育士の存在が、日本の経済活動や、男女共同参画社会の実現を、根底から支えているのだ。さらに、地域社会における「子育て支援の拠点」としての役割も大きい。育児に不安や孤立感を抱える家庭にとって、保育士は最も身近で、信頼できる相談相手となる。時には、家庭が抱える困難な状況を早期に発見し、必要な専門機関へと繋ぐ、セーフティネットとしての機能も果たす。それは、社会の最も弱い立場にある人々を守り、支えるという、非常に尊い仕事である。保育士の仕事は、決して目立つことばかりではないかもしれない。しかし、その手の中には、確かに、一人の人間の未来が、そして、社会の未来が託されている。日々の実践の一つひとつが、より良い社会を創造するための、礎の一つとなっている。この揺るぎない実感と誇りこそが、保育士という仕事の、究極の魅力なのである。
社会の土台を育む誇り、保育士という仕事が持つ深い価値